STEP1 査定依頼 STEP2 媒介契約 STEP3 販売活動 STEP4 契約・引渡 不動産会社 税理士 弁護士 売主・買主・専門家が連携して進める店舗付き住宅の売却

店舗付き住宅の売却方法|手順・価格・税金・よくある失敗まとめ

QUICK ANSWER ─ この記事が答える問い

店舗付き住宅を売却するには、どのように進めればよいですか?

結論から言うと、売却の基本的な流れは「①現況の整理→②複数社への査定依頼→③媒介契約の締結→④販売活動→⑤売買契約・引き渡し」の5段階です。店舗付き住宅は住宅と商業用途が混在するため、一般的な住宅売却より専門性が求められます。価格・税金・テナント対応・法令確認を事前に整理した上で、事業用・収益物件の取り扱い実績がある不動産会社と税理士に相談しながら進めることが、損をしないための基本的な進め方です。

「店舗付き住宅を売りたいが、普通の家と同じように売れるのだろうか」「いつ、どの会社に頼めばいいのかわからない」「税金はどのくらいかかるのか不安」――そうしたお悩みをお持ちの方に向けて、この記事では店舗付き住宅の売却方法を一から丁寧に解説します。

店舗付き住宅は、住居部分と店舗・事務所などの事業用部分が一体になった複合物件です。そのため、純粋な住宅売却とも収益物件売却とも異なる特有のルールや注意点があります。買い手が見つかりにくいケース・税金の計算が複雑になるケース・テナントが絡む手続きなど、知らずに進めると思わぬ損失につながることもあります。

この記事では、売却の基本的な流れから価格の決め方・媒介契約の種類・税金の基礎・よくある失敗まで、16セクション・FAQ10問で網羅的にお伝えします。相続で取得した方、空き店舗になった方、築古で売り方に迷っている方にも役立てていただける内容です。

1. 店舗付き住宅の売却は何が難しいのか

ポイントは3つ:用途の複合性・買い手層の絞られやすさ・税金の複雑さが、店舗付き住宅売却における主な難しさです。

住宅でも収益物件でもない「中間的な存在」

店舗付き住宅を売却しようとすると、まず「どういう買い手を探すのか」という問いに直面します。純粋な住宅購入層からすると「店舗部分を持て余す」と感じられやすく、投資家・法人からすると「居住部分があってテナント経営に使いにくい」と判断されることがあります。

このように、店舗付き住宅は住宅専門の不動産会社にとっても、収益物件専門の業者にとっても「主力商品」になりにくい面があります。そのため、物件特性をよく理解した不動産会社を選ぶことが、売却成功の大きなポイントになります。

一方で、「自分で住みながら1階で商売をしたい」「DIYや趣味のスペースとして使いたい」「小規模な賃貸事業をしたい」といったニーズを持つ買い手が一定数いるのも事実です。どういった層に訴求するかを不動産会社と一緒に整理することが、売却活動のスタートラインになります。

住宅ローンが通りにくいケースがある

店舗付き住宅を購入しようとする個人の買い手が住宅ローンを利用しようとすると、金融機関から「事業用部分の床面積が一定割合を超えている」として融資を断られるケースがあります。一般的に住宅ローンは「居住用」として認められる部分が一定以上ある場合に適用されますが、その基準は金融機関によって異なります。

事業用ローン(アパートローン・事業用融資)は住宅ローンより金利が高く審査も厳しい傾向があります。融資が受けにくいと買い手が現金購入者に限られるため、売却価格の交渉で不利になりやすい点を頭に置いておく必要があります。

税金の計算が複雑になりやすい

店舗付き住宅を売却すると、居住用部分と事業用部分で税金の扱いが異なります。居住用財産として認められる部分には「3,000万円特別控除」などの特例が適用される可能性がありますが、事業用部分には適用されません。このような「按分(あんぶん:面積などに応じて割り合いを分けること)」の計算は、専門知識が必要です。売却前に必ず税理士に相談することをおすすめします。

2. 売却価格の決まり方―査定のしくみと相場

ポイントは3つ:査定は「取引事例比較法・原価法・収益還元法」の3手法で行われます。テナントの有無と建物の状態が価格に大きく影響します。

査定の3手法とそれぞれの特徴

不動産会社が査定額を算出するときに使う主な手法は3種類あります。店舗付き住宅の場合、状況によって重みを置く手法が変わります。

手法 概要 店舗付き住宅への適用場面
取引事例比較法 近隣の成約事例と比較し、条件の差異を補正して価格を算出 自用・空き店舗の場合に重視されやすい
原価法(積算価格) 土地価格+建物再調達原価×残存価値で算出 築古で収益がない物件で参考にされやすい
収益還元法 賃料収入から物件の収益価値を逆算 テナントが入居中で賃料収入がある場合に重視されやすい

テナントが入居中の場合の価格

テナント(借主)が入居していて安定した賃料収入がある場合、収益還元法で物件価値が評価されます。表面利回り(年間賃料÷購入価格×100)が一定水準を満たすと判断されれば、投資家・法人が購入対象として検討しやすくなります。

ただし、旧耐震基準の建物や修繕積み残しが多い場合は、投資家からの価格交渉が入りやすい傾向があります。テナントが入っていても、長期的な維持コストや建物の状態次第で評価が下がることがある点は念頭に置いておくとよいでしょう。

「複数社査定」で相場感を掴む

店舗付き住宅の査定額は、不動産会社によってばらつきが出やすい傾向があります。これは、買い手をどの層に想定するか、どの評価手法を重視するかによって価格が変わるためです。一般的には2〜3社以上から査定を取り、価格の根拠を比較することが相場感を掴む近道です。

査定額が他社より大幅に高い会社には注意が必要です。「最初に高い査定を提示して媒介契約を取り、後で値下げを誘導する」という悪質な手法(いわゆる「囲い込み」や「高額査定」)を防ぐためにも、価格の根拠を丁寧に説明してくれる会社を選ぶ目安にしましょう。

3. 売却の基本的な流れ(5ステップ)

ポイントは5つ:「現況整理→査定→媒介契約→販売活動→契約・引き渡し」の順に進みます。各段階で確認すべきことが異なります。

ステップ①:現況の整理と書類の確認

売却活動を始める前に、物件の現況を整理しましょう。最低限確認しておきたい書類と情報は以下のとおりです。

  • 登記事項証明書(所有者・抵当権の有無などを確認)
  • 建築確認済証・検査済証(建物の適法性を確認)
  • 固定資産税の納税通知書・固定資産税評価証明書
  • 公図・地積測量図(土地の形状・境界の状況)
  • 賃貸借契約書(テナントがいる場合)
  • 建物の修繕・設備の状況(わかる範囲でメモしておく)

書類が揃っていない場合でも売却自体は進められますが、早めに手配しておくと査定・契約がスムーズになります。登記事項証明書は法務局やオンラインで取得可能です。

ステップ②:複数の不動産会社に査定依頼

現況が整理できたら、複数の不動産会社に査定を依頼します。事業用・収益物件の取り扱い実績がある会社を選ぶのが一般的な目安です。査定には「机上査定(書類ベースで概算を算出)」と「現地査定(担当者が物件を実際に確認)」があります。精度が高いのは現地査定です。

査定書を受け取ったら、価格だけでなく「根拠となる近隣成約事例」「想定する買い手層」「売却期間の見通し」なども確認しましょう。根拠の説明が曖昧な会社は注意が必要です。

ステップ③:媒介契約の締結

売却を依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約(売却を依頼する契約)を締結します。媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があり、それぞれ特徴が異なります(詳しくは第4章で解説)。

媒介契約書には、売却価格・契約期間・仲介手数料・広告掲載の範囲などが明記されます。内容をよく確認してから署名・押印してください。

ステップ④:販売活動(物件の告知・購入希望者への対応)

媒介契約後、不動産会社が物件をREINS(レインズ:不動産流通機構の物件情報データベース)や各種不動産ポータルサイトに登録して、購入希望者を募ります。内覧希望者への対応・価格交渉などは主に不動産会社が担います。

販売期間が長引く場合(目安として3か月以上)は、価格設定の見直しや販売戦略の変更を検討する段階を不動産会社と相談するのが一般的な対応です。

ステップ⑤:売買契約・引き渡し・確定申告

買い手が決まったら、売買契約(不動産売買契約書に署名・捺印)を結びます。通常は手付金(売買代金の5〜10%程度が目安)を受領し、引き渡し日(残代金決済)まで間隔を置きます。引き渡しと同時に残代金を受け取り、登記手続きを行います。売却益が出た場合は、翌年の確定申告(2月16日〜3月15日)で譲渡所得税の申告が必要です。税理士に依頼することをおすすめします。

4. 媒介契約の種類と選び方

ポイントは3つ:媒介契約は「一般・専任・専属専任」の3種類です。店舗付き住宅は専門性の高い業者と専任・専属専任で進めるケースが多い傾向があります。
種類 他社への依頼 自己発見取引 REINS登録義務 向いているケース
一般媒介 複数社OK OK 義務なし 需要が高く売りやすい物件
専任媒介 1社のみ OK 7日以内に登録必要 特定業者に専門的に動いてもらいたい場合
専属専任媒介 1社のみ 不可 5日以内に登録必要 業者主導で積極的に動いてもらいたい場合

店舗付き住宅に向いている媒介契約は

店舗付き住宅は買い手層が限られる傾向があるため、事業用物件の経験豊富な1社に集中して活動してもらう「専任媒介」か「専属専任媒介」を選ぶケースが多い傾向があります。専任・専属専任はREINSへの登録義務があるため、市場への情報公開も担保されます。

一般媒介は複数社に依頼できる一方、各社の活動が分散しやすく、REINSへの登録義務もないため、情報が市場に広まりにくいこともあります。物件特性を踏まえて選択することが大切です。

5. テナントがいる場合の対応

ポイントは3つ:テナントが入居中の場合、「オーナーチェンジ売却」「立退き後売却」「テナント承諾を得て売却」の3つの方向性があります。

オーナーチェンジ売却とは

テナントに退去してもらわず、賃貸借契約ごと買い手に引き継ぐ売却方法を「オーナーチェンジ売却(賃貸中売却)」と言います。売主はテナントに退去を求める手間が省けますが、買い手は自分で使いたい場合には向かない物件になります。

オーナーチェンジ売却では、買い手が取得後も家賃収入を継続できるため、投資家・法人が主な買い手層となります。その場合は収益還元法で価格が評価されることが多く、テナントの賃料水準・契約内容・建物状態が価格に直結します。

テナントに退去してもらう場合の注意点

テナントが「普通借家契約(正当事由がなければ大家から一方的に解約できない契約)」で入居している場合、売却や建て替えのために退去をお願いしても、テナント側が拒否できる権利を持っています。大家側から解約するには「正当事由」が必要で、これは容易には認められません。

実務では、立退料(テナントが退去することへの補償金)を支払うことで合意に至るケースがあります。立退料の相場は賃料の数か月〜数年分など、状況によって大きく異なります。立退き交渉は感情的なトラブルにもなりやすいため、弁護士に対応を依頼することをおすすめします。

定期借家契約で入居中の場合

定期借家契約(契約期間の満了で更新がなく終了する契約)でテナントが入居している場合は、契約期間満了後にテナントが退去します。売却のタイミングを契約期間に合わせる方法も選択肢のひとつです。ただし、契約内容の確認と売却スケジュールの調整が必要なため、不動産会社と早めに連絡を取ることをおすすめします。

6. よくある悩み別ケーススタディ

ポイントは4つ:「相続後処理・空き店舗・築古・売却長期化」のケースごとに、向いている対応策があります。

ケース①:相続で取得した店舗付き住宅を売却したい

相続後に売却する場合、まず相続登記(2024年4月から義務化)を完了させることが必要です。登記が未完了のまま売却活動を始めても、実際に売買契約・引き渡しの手続きに進めません。

また、相続から3年以内に売却すると「相続税の取得費加算特例」が使えるケースがあります(一定要件あり)。この特例は手取り額に大きく影響することがあるため、売却タイミングを税理士と相談することをおすすめします。

ケース②:1階の店舗が空き店舗になっている

店舗部分が空室の場合は収益評価がつかず、土地値+建物残存価値での評価になりやすいです。ただし、立地が良ければ「自分で使いたい買い手」が現れることもあります。空き店舗のまま現況売却するか、簡易なリフォームをして見栄えを整えてから売り出すかは、費用対効果を検討した上で判断するとよいでしょう。

ケース③:築古で売れるか不安がある

築古物件でも、「解体を前提とした更地渡し」や「不動産買取(業者が直接購入)」で売却できるケースがあります。買取は仲介より価格が低くなる傾向がありますが、早期に現金化できるメリットがあります。解体コストを加味した上で更地売却価格を試算し、仲介と比較するのが一般的な目安です。

ケース④:売却活動が長引いている

売却活動が3か月以上続く場合は、価格設定・販売方法・訴求する買い手層の再検討が必要な段階であることが多い傾向があります。担当者から定期的な活動報告(問い合わせ件数・内覧件数・市場の反応など)を受けながら、戦略を見直すことが重要です。媒介契約の契約期間(専任・専属専任は最長3か月)の更新時が見直しのタイミングになります。

7. 売却方法の比較早見表

ポイントは4つ:「仲介・買取・競売・任意売却」という売却方法の違いを把握しておくと、状況に合った選択がしやすくなります。
売却方法 概要 メリット デメリット 向いているケース
仲介 不動産会社が買い手を探す一般的な方法 市場価格に近い価格で売れる可能性 時間がかかる場合がある 時間的余裕があり高値を目指したい場合
買取 不動産会社が直接物件を購入 早期現金化・確実性が高い 仲介より価格が低くなる傾向がある 早急に売却したい・仲介で売れなかった場合
任意売却 住宅ローン等の抵当権がある場合の特殊な売却 競売より高値になる可能性がある 債権者との交渉・手続きが複雑 ローンの返済が困難な場合(弁護士・専門業者に相談)

8. 売却時に必要な書類・手続き

ポイントは3つ:書類は「登記・建物・税務・テナント」の4種類に分けて準備するとわかりやすくなります。

売却時に揃えておく主な書類一覧

カテゴリ 書類名 入手先
登記関係 登記事項証明書(土地・建物) 法務局・オンライン
公図・地積測量図 法務局
印鑑証明書(売主) 市区町村役場
建物関係 建築確認済証・検査済証 保管書類(紛失の場合は台帳記載事項証明書)
間取り図・設備仕様書(あれば) 保管書類
税務関係 固定資産税の納税通知書 市区町村から毎年送付
固定資産税評価証明書 市区町村役場
テナント関係 賃貸借契約書・賃料明細 手元の書類

買い手への重要事項説明に備えて確認すること

売買契約前に、不動産会社の宅地建物取引士(宅建士)が買い手に「重要事項説明」を行います。この説明には物件の法令制限・権利関係・設備の状況など重要な情報が含まれます。売主として「告知義務」があるため、建物の雨漏り・シロアリ被害・設備の不具合などの瑕疵(欠陥)は正直に申告することが大切です。

故意に瑕疵を隠した場合、売買後に買い手からの損害賠償請求や契約解除を求められるリスクがあります。現況引き渡しの場合でも、告知義務は免除されません。

9. 押さえておきたい注意点と失敗事例

ポイントは4つ:「高額査定への誤った信頼・告知義務の忘れ・税金の見落とし・境界未確定」が、よくある失敗の4大パターンです。

失敗①:高額査定を信じて契約したら値下げを繰り返した

複数の不動産会社の中から最も高い査定額を出した会社と媒介契約を結んだものの、実際に売れず何度も値下げを繰り返すことになった——というケースは珍しくありません。これは「高額査定で契約を取り、後で値下げを誘導する」という悪質な慣行によるものです。

査定額の根拠(近隣成約事例・価格の算出プロセス)を必ず確認し、「なぜこの価格で売れると考えているか」を具体的に説明してくれる会社を選ぶことが大切です。

失敗②:告知義務を忘れて売買後にトラブルになった

建物の雨漏りや設備の不具合を申告せずに売却したところ、買い手から「知っていたのに言わなかった」と損害賠償を請求されたケースがあります。瑕疵の告知は法律上の義務であり、知っていた不具合を意図的に隠すと契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)を問われる可能性があります。

気になる部分は正直に告知書(物件状況等報告書)に記載することが、後々のトラブルを防ぐ基本的な対策です。

失敗③:売却後に多額の税金が発生して驚いた

売却価格から諸費用を引いた「手取り額」ばかりを意識していたところ、翌年の確定申告で多額の譲渡所得税が発生して驚いたというケースは多くあります。特に、建物部分の減価償却が進んでいて「取得費がほぼゼロ」に近い状態になっている場合、売却益が大きく算出されて税額が増えることがあります。

税金は「売却前」に税理士に試算を依頼することで、事前に備えることができます。売却益の一部を税金の納付に充てる準備を、引き渡し前からしておくことをおすすめします。

失敗④:境界未確定が発覚して売却が遅れた

売却活動が進んでいた段階で隣地との境界が確定していないことが判明し、境界確定測量を行う必要が生じたためにスケジュールが大幅に遅れたケースがあります。境界確定は土地家屋調査士による測量・隣地所有者との立会いが必要で、数か月かかることもあります。事前に境界の確認をしておくことで、売却活動をスムーズに進めることができます。

10. 業者・専門家の選び方

ポイントは3つ:不動産会社・税理士・弁護士の3者それぞれに「選ぶ際のポイント」があります。

不動産会社を選ぶポイント

店舗付き住宅の売却を依頼する不動産会社は、以下の点を確認しながら選ぶことをおすすめします。

  • 事業用・収益物件・店舗ビルの売却実績があるか
  • 査定書に価格の根拠(近隣成約事例など)が明記されているか
  • 売却活動の具体的な戦略(想定買い手層・広告掲載先・反響状況の報告など)を説明できるか
  • 担当者が法令制限・税金・テナント対応についても基本的な知識を持っているか
  • 買取にも対応しているか(仲介と買取を比較できる環境か)

税理士を選ぶポイント

不動産の譲渡所得・相続税・固定資産税は専門性が高く、税理士の得意分野によって対応の質が変わります。不動産取引の申告実績が豊富な税理士に相談することをおすすめします。売却前の段階で税理士に相談することで、特例の適用可否・売却タイミングの最適化・税額の事前把握が可能になります。

弁護士・司法書士・土地家屋調査士が必要なケース

テナントとの立退き交渉・相続人間のトラブル・境界紛争などには弁護士の関与が必要です。相続登記・抵当権抹消などの登記手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。境界確定測量は土地家屋調査士の専門領域です。売却に関わるすべてを不動産会社に任せきりにせず、必要に応じて各専門家を活用することが、スムーズかつ安全な売却につながります。

11. 関連する税金の基礎知識

ポイントは3つ:売却時にかかる税金は「譲渡所得税・住民税・印紙税・登録免許税」が主なものです。店舗付き住宅特有の「居住用・事業用の按分」がポイントになります。

譲渡所得税のしくみ(店舗付き住宅の特有ポイント)

不動産売却の利益(譲渡所得)は「売却価格-(取得費+譲渡費用)」で計算します。保有期間が5年超の場合は長期譲渡(税率約20%が目安)、5年以下の場合は短期譲渡(税率約39%が目安)となります(一般的な目安であり、個別状況によって異なります)。

店舗付き住宅の場合、居住用財産の特例(3,000万円特別控除・軽減税率の特例など)は「居住用部分」にしか適用されません。事業用部分には適用されないため、建物の用途に応じた面積按分(床面積で居住用・事業用に按分)が必要です。

印紙税・登録免許税

売買契約書に貼付する印紙税は、売買代金の金額に応じて変わります(例:1,000万円超〜5,000万円以下の場合は2万円の印紙が目安)。不動産の登記移転に伴う登録免許税は買主が負担するのが一般的ですが、売主側の抵当権抹消登記費用は売主負担になります。

仲介手数料の目安

売買が成立した際に不動産会社に支払う仲介手数料は、法律(宅地建物取引業法)で上限が定められています。売買代金が400万円超の場合の上限の目安は「売買代金×3%+6万円(税別)」です。これは法定の上限であり、交渉によって引き下げが可能なケースもあります。

12. よくある質問10選(FAQ)

10問の構成:売却手順・価格・税金・テナント・専門家に関するよくある質問をまとめました。

Q1. 店舗付き住宅を売りたいが、まず何から始めればいいですか?

まずは、手元にある書類(登記事項証明書・建築確認済証・固定資産税納税通知書・賃貸借契約書など)を整理するところから始めましょう。書類が揃ったら、事業用・収益物件の取り扱い経験がある不動産会社に現地査定を依頼するのが、一般的な最初の一歩です。並行して税理士に相談し、売却した場合の税額の概算を把握しておくと判断がしやすくなります。

Q2. 査定は何社に依頼すればいいですか?

一般的には2〜3社程度に依頼するのが目安です。1社だけでは価格の比較ができず、適正価格かどうかの判断が難しくなります。一方で、5社以上に一斉に依頼すると物件情報が広まりすぎて、「どこか問題があるから売れないのでは」と思われるリスクがあることも知られています。まずは2〜3社に絞って依頼し、それぞれの根拠を比較するのが一般的な目安です。

Q3. 売却するのに費用はどのくらいかかりますか?

主な費用は「仲介手数料・印紙税・抵当権抹消登記費用・譲渡所得税」です。仲介手数料は売買代金の3%+6万円(税別)が上限の目安です。印紙税は売買代金によって異なります。抵当権がある場合の抹消登記は司法書士費用込みで数万円程度が目安とされることがあります。最も金額が大きくなる可能性があるのが譲渡所得税です。事前に税理士に試算を依頼することをおすすめします。

Q4. テナントが入っているまま売却できますか?

可能です。テナントの賃貸借契約を引き継いだ状態で売却する「オーナーチェンジ売却」は、一般的な方法のひとつです。ただし、買い手は自分で使うことができないため、投資家・法人が主な買い手層になります。テナントを退去させてから売却したい場合は、立退き交渉が必要になることがあります。立退き交渉については弁護士に相談することをおすすめします。

Q5. 売却前にリフォームや修繕は必要ですか?

基本的には必須ではありませんが、状況によって判断が分かれます。費用をかけてリフォームしても、売却価格に上乗せできない場合はコストの無駄になることがあります。一方、見栄えを整えるだけの軽微なクリーニング・整理整頓は、内覧時の第一印象を改善するために有効なケースがあります。大規模なリフォームをする前に、不動産会社に「リフォームなしで現況売却した場合の価格」と「リフォーム後の想定価格」を比較してもらうとよいでしょう。

Q6. 媒介契約は何か月で結べますか?途中で解約できますか?

専任媒介・専属専任媒介の契約期間の上限は3か月です(更新は可能)。一般媒介には法定の上限がありませんが、実務的には3か月程度が多い傾向があります。途中解約は、業者側に重大な義務違反がある場合を除き、費用(広告費など実費)を請求されるケースがあります。契約前に解約条件を確認しておくことをおすすめします。

Q7. 住宅ローンの残債がある場合、売却できますか?

売却価格でローン残債を完済できる場合(アンダーローン)は、通常の売却手続きで問題ありません。売却価格よりローン残債が多い場合(オーバーローン)は、自己資金で差額を補填するか、金融機関と交渉して任意売却の手続きを行う必要があります。任意売却は手続きが複雑なため、早い段階で弁護士や任意売却の専門業者に相談することをおすすめします。

Q8. 居住用部分と店舗部分の割合はどう決まりますか?

税務上の計算では、一般的に「床面積の割合」で居住用部分と事業用部分に按分することが多い傾向があります。例えば、建物全体の延床面積が100㎡で、うち住居部分が60㎡・店舗部分が40㎡であれば、居住用60%・事業用40%という按分になります。この按分比率によって、居住用財産の特例が適用される範囲が変わります。具体的な計算方法は税理士にご確認ください。

Q9. 相続した物件を複数の兄弟で分けて売るにはどうすればいいですか?

相続人が複数いる場合、全員が合意した上で遺産分割協議書を作成し、相続登記を行ってから売却手続きに進む必要があります。「共有のまま売却する」方法もありますが、共有者全員の同意が必要なため、一人でも反対すると売却が進まない状況になることがあります。兄弟間で意見が割れている場合は、弁護士に間に入ってもらい、合意形成を図ることをおすすめします。

Q10. 売却を急ぐ必要はありますか?タイミングはいつがよいですか?

一般的に「急ぐほど売却価格が下がりやすい」と言われます。ただし、老朽化が進む物件は時間が経つほど状態が悪化しやすく、維持費・固定資産税の負担も続きます。税金の面では、保有期間が5年を超えると長期譲渡所得の税率が適用され有利になるケースがあります。また、相続後3年以内に売却すると「相続税の取得費加算特例」が使えるケースもあります。売却タイミングは不動産会社と税理士の両方に相談しながら検討することをおすすめします。

税金・法務に関するご注意

【税理士へのご相談をおすすめします】
譲渡所得税の計算(取得費の証明・用途按分・特例の適用可否)、相続税の取得費加算特例、印紙税・確定申告の手続きなど、売却に関わる税務は個別の状況によって大きく異なります。売却前の早い段階で、不動産取引の申告実績が豊富な税理士にご相談ください。

【弁護士へのご相談をおすすめします】
テナントの立退き交渉・立退料の算定・普通借家契約の解除要件(借地借家法)、契約不適合責任の範囲・免責条項の有効性、相続人間のトラブルや境界紛争など、法律問題が絡む場合は弁護士にご相談ください。

13. まとめ

要点の再掲:店舗付き住宅の売却は「専門家への事前相談→複数社査定→慎重な媒介契約→告知義務の遵守」の順に落ち着いて進めることが大切です。

この記事では、店舗付き住宅の売却方法について、査定のしくみ・媒介契約・テナント対応・必要書類・失敗事例・税金の基礎まで幅広く解説しました。要点をまとめると以下のとおりです。

  • 店舗付き住宅は住居と事業用途の複合物件で、買い手層や売却価格の考え方が通常の住宅と異なる
  • 査定は複数社(2〜3社が目安)に依頼し、価格の根拠を比較することが重要
  • 媒介契約は物件の特性に応じて「一般・専任・専属専任」を使い分けること
  • テナントが入居中の場合は「オーナーチェンジ売却か立退きか」を事前に方針を決めておくこと
  • 告知義務(瑕疵の正直な申告)を怠ると、売却後にトラブルになるリスクがある
  • 売却益に対する税金(譲渡所得税)は、売却前に税理士に試算を依頼することが重要
  • 相続後の売却・テナントとの立退き・境界確定など、専門家への相談が早期解決につながりやすい

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