美容室を開業する際、内装工事の費用は重要なポイントとなります。内装工事の費用は、デザインや施工方法、物件の状態によって大きく変動するため、事前にしっかりとした計画を立てて業者を選ぶなど、しっかとした準備が重要です。さらに、コストを抑える方法を検討しながら、理想の店舗を実現するための工夫も求められます。
内装工事の費用項目と業者の選び方
美容室の内装工事費用は、大きく分けて「デザイン・設計費用」と「施工費用」の2つに分類されます。
- デザイン・設計費用:美容室のコンセプトに基づいたデザインやレイアウトの設計を行う費用。
- 施工費用:内装の造作、配管工事、電気工事、空調設備の設置などの実際の工事にかかる費用。
また、美容室の内装工事を依頼する業者には以下の3種類があり、どの業者に依頼するかによっても費用が変わってきます。
- デザイン・設計のみを行う業者:施工は別途依頼する必要があるため、手間がかかるが、自由度が高い。
- 工事のみを行う業者:デザインは別途デザイナーや設計会社に依頼する必要があり、トータルコストが上がることもある。
- デザインから施工まで一貫して行う業者:窓口が一つになり、手間が軽減されるが、費用がやや高めになることもある。
内装工事では選ぶ業者によって費用は大きく異なるため、複数の見積もりを比較し、最適な方法を選ぶことが重要です。
美容室の内装工事費用の相場と試算
美容室の内装工事の費用相場は、「坪単価(1坪あたりの工事費)」によって算出されます。一般的な相場は以下の通りです。
- 標準的な内装:1坪あたり50万円前後
- こだわりのあるデザイン:1坪あたり65万円以上
例えば、20坪の美容室の場合、以下のような費用が目安となります。
例:20坪の美容室の場合
- 坪単価50万円 × 20坪 = 1,000万円
- 坪単価65万円 × 20坪 = 1,300万円
内装費用のほかに、家具・機材・設備費用も考慮する必要があります。
新築物件と居抜き物件の違いとコスト比較
美容室を新築物件で開業する場合と、既存の美容室を利用する「居抜き物件」で開業する場合では、内装工事の費用相場が異なります。
新築物件の場合
- すべてゼロから設計・施工するため、坪単価は相場通りになりやすい。
- 設備や配線を自由に設計できるが、費用が高くなりやすい。
- 許認可手続きや工事期間が長くなる可能性がある。
居抜き物件の場合
- 以前の美容室の設備を活用できる場合、費用を抑えられる。
- 解体工事が発生する場合は、かえって費用が高くなることも。
- 設備が老朽化している場合、改修費用が発生する可能性がある。
- 物件の契約条件によって、リフォームが制限されることもある。
設備導入費用と工事のポイント
美容室の内装工事では、店舗の雰囲気を決めるインテリアだけでなく、快適に営業するための設備も重要です。
電気・水道・ガス設備
- 電気容量:ドライヤーやエアコンなどの使用に対応した電気容量の確保。
- 水道設備:シャンプー台の配置や給湯設備の設置。
- ガス設備:ボイラーや給湯器の選定(ガス式・電気式の選択)。
内装に関わるその他の設備
- エアコン・換気設備:適切な温度・湿度管理。
- 防音対策:隣接店舗への配慮や施術の快適性向上。
- 照明設備:雰囲気や施術のしやすさに影響。
物件選びで費用を抑えるポイント
物件選びで費用を抑えるには、以下のようなポイントを押さえておくことが重要です。
-
設備容量を確認する
- 既存の電気・ガス・水道設備が美容室の運営に適しているかを確認。
- 容量不足の場合、増設費用が発生する可能性がある。
-
物件の階数を考慮する
- 1階の物件は家賃が高いが、工事費用が抑えられる傾向にある。
- 高層階では、エアコンの室外機の設置費用や配線工事の費用がかかる。
-
工事時間の制約を確認する
- 夜間工事のみ許可されている場合、追加の手当が発生することがある。
- 商業施設やマンションでは、工事可能時間が限られている場合が多い。
美容室開業時の手元資金の考え方
美容室を開業する際には、工事費用とは別に、一定の手元資金を確保しておくことが重要です。推奨される手元資金の目安は以下の通りです。
- 固定費の3〜6ヶ月分を確保する
- 家賃、人件費、広告費、水道光熱費などを含む。
例:月の固定費が120万円の場合
- 120万円 × 3ヶ月 = 360万円
- 120万円 × 6ヶ月 = 720万円
美容室の内装工事で費用をかけるべきポイント
美容室の内装工事では、どこに重点的に費用をかけるべきかを慎重に考えることが重要です。特に、店舗の快適性や長期的なコストを考慮すると、以下のポイントに予算をかけることが望ましいです。
1. 空調や換気設備
美容室はドライヤーやパーマ機器などの使用により室内の温度が上がりやすいため、適切な空調設備が必要です。また、薬剤を使用することも多く、換気が不十分だと施術環境が悪化します。そのため、以下の点を重視しましょう。
- エアコンの選定:広さに適したエアコンの設置(業務用エアコンがおすすめ)
- 換気設備の強化:薬剤の臭いを素早く排出する換気システムの導入
- 湿度管理:パーマやカラー施術に影響を与えない湿度調整機能の検討
2. 電気工事(コンセントの配置や容量計算)
美容室では多くの電化製品を使用するため、適切な電気設備の整備が不可欠です。
- コンセントの数と配置:セット面やシャンプー台の近くに十分な数のコンセントを設置
- 電気容量の確保:ブレーカーが落ちないように必要な電力を計算し、容量を増設
- 配線の安全性:電力の供給が安定するように適切な配線工事を施す
3. 照明設備(セット面の明るさ・色温度)
照明は美容室の雰囲気や施術のしやすさに影響を与えます。
- 色温度の調整:施術時のカラー判断を正確にするため、自然光に近い照明を採用
- 明るさの確保:カットやカラー施術時に影ができないよう、適切な配置と光量を確保
- インテリアに合わせたデザイン照明:リラックスできる空間を演出するため、間接照明の活用も検討
4. 床材・壁材の選定
床や壁は美容室の雰囲気を決めるだけでなく、清掃のしやすさや耐久性にも影響を与えます。
- 耐水性のある床材:シャンプー時の水濡れに強い素材(フロアタイルや防水塗装)
- 掃除のしやすい壁材:薬剤の飛び散りを考慮し、汚れが落ちやすい壁材を選択
- デザイン性とのバランス:店舗のコンセプトに合った素材を選ぶ
5. シャンプー台・セット面の設備
施術の快適性を左右するシャンプー台やセット面は、使いやすさとデザインの両方を考慮して選びましょう。
- シャンプー台の種類:フルフラット型やバックシャンプー型など、施術のしやすさを考慮
- セット面のレイアウト:動線を意識し、作業がしやすい配置を検討
- ミラーのサイズと配置:お客様の顔が適切に映る高さと角度を確保
施工後のメンテナンス費用について
美容室の設備や内装は、長期間快適に使用するために定期的なメンテナンスが必要です。開業後にかかるメンテナンス費用をあらかじめ想定し、計画的に管理することが重要です。
1. 定期的な修繕費用
- 壁紙や床材の劣化補修:施術時の薬剤飛び散りや経年劣化による汚れを修繕
- 塗装の塗り直し:壁や家具の色あせ対策として定期的に塗装を施す
- セット面・シャンプー台のメンテナンス:ヒビ割れや故障を防ぐため、定期点検を実施
2. 設備更新費用
- エアコン・換気設備の点検・交換:フィルター清掃やガス補充を行い、適切な温度管理を維持
- 給湯器の点検・交換:お湯の供給が安定するよう、定期的なメンテナンスを実施
- 照明器具の交換:LEDライトの寿命に応じて交換し、光量を一定に保つ
まとめ
美容室の内装工事には、設計・デザイン費用、施工費用、設備費用などが含まれ、物件の状態や規模によって大きく変動します。費用を抑えながら質の高い内装を実現するためには、事前の計画と適切な業者選びが重要です。また、手元資金を確保し、無理のない開業計画を立てることも成功の鍵となります。